「このままでいいのだろうか?」
都会での暮らしの中で、ふとそんな想いが胸をよぎったのは、ある平日の夜でした。
仕事を終えて帰宅すると、娘はもう布団の中。
その日も、ほとんど言葉を交わせないまま一日が終わっていきました。
目の前の仕事に追われる毎日。
家族との時間は減る一方で、自分自身もどこかすり減っていく感覚がありました。
家族と過ごす時間が、ほとんどなかった
「お父さん、今日なにしてたの?」と娘に聞かれて、言葉に詰まったことがあります。
どこかに出かけたわけでもなく、特別な出来事があったわけでもない。
ただただ、仕事をして、帰ってきただけの日。
娘は、日々成長していく。
だけど私は、その時間をそばで見守ることができていませんでした。
その現実に、ふと寂しさを感じたんです。
自然の中で暮らしたいという気持ち
生まれ育った九州・宮崎には、四季の移ろいを肌で感じる時間がありました。
山の匂い、風の音、空の広さ。
東京での生活は便利だけれど、自然と向き合う時間はほとんどありませんでした。
せかせかとした日々の中で、私の中には「自然に囲まれて暮らしたい」という気持ちが、少しずつ育っていたように思います。
母と娘をつなぐために
私は小学校1年生のときに父を亡くし、それからは母がひとりで私と妹を育ててくれました。
決して裕福とは言えない環境の中で、母はいつも前を向いて、私たちのことを一番に考えてくれていたと思います。
そんな母も、年齢を重ねてきました。
近くで支えたいという気持ちは、年々強くなっていきました。
そして、娘にとっても「おばあちゃんと過ごす時間」は、かけがえのないものになるはず。
今のこの時間をしっかり感じてほしい――そう思ったんです。
親の老いと、子どもの成長。
どちらも、あとから取り戻すことはできない。
だから私は、「今、帰るべきだ」と思いました。
決断して、今思うこと
もちろん、地方に戻ることには不安もありました。
仕事のこと、収入のこと、生活の変化。
けれど、いざ九州に戻ってみると、思っていたよりもずっと穏やかな毎日がありました。
家族と向き合う時間が増え、心に余裕が戻ってきたように感じています。
そして、九州に戻ってしばらくして、息子も生まれました。
今では家族が4人になり、以前よりもずっと「家族とともにある暮らし」を感じられるようになっています。
「本当に大切なものって、案外すぐそばにあったんだな」
そう思える今が、何より幸せです。
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